病院での急性発作対応

喘息発作として治療を開始すると同時に、他疾患の合併や鑑別を行う必要がある。鑑別を要する疾患はJPGL2013ハンドブックの第2章を、合併症はJPGL2013ハンドブック第9章を参照されたい。発作強度に応じて迅速な入院治療の必要性を判断するが、中発作までであれば外来治療で帰宅できる可能性がある。
乳児喘息発作に対する医療機関での対応も基本的には2歳以上の場合と変わらない。ただ乳児喘息発作は短時間に重症化することがあることに留意し、β2刺激薬への反応が良好な場合を除き、原則入院加療とする。初発発作での喘息死もごく稀ではあるが存在することを念頭に置いて治療にあたる必要がある。

1.救急外来治療で把握すべき事柄

  • 発作強度(外来治療から始められるか、迅速な入院治療が必要か)
  • 発症からの時間と増悪の原因
  • これまでの服薬状況(長期管理薬の内容、発作時に家庭あるいは前医で使用した薬物とその時間)
  • 喘息による入院および呼吸不全の既往の有無と救急外来の受診状況
  • 薬物アレルギーの有無

2.小発作に対する治療

β2刺激薬吸入(反復吸入を含む)を行う。十分に改善しない場合は、他疾患の鑑別も考慮して中発作に対する治療に移行する。(図4-1表4-1表4-2

3.中発作に対する治療

図4-1図4-2表4-1表4-2

1)中発作に対する初期治療

①酸素投与の必要性:SpO2 を測定し、SpO2 ≧ 95%となるように酸素投与を行う。
②β2刺激薬吸入:β2刺激薬吸入をネブライザーで吸入させる。吸入後15~30分で効果を判定するが、改善が不十分であれば20~30分ごとに3回まで反復することができる。

2)中発作に対する追加治療

初期治療で十分に改善しない場合、下記治療を追加する。外来では2~3時間程度を目安に治療を行い、その間に入院の適応を考慮するが、2歳未満では入院加療とすることが望ましい。

①全身性ステロイド薬投与

ステロイド薬の内服または静注を追加する。標準的な投与量を表4-3に示す。全身性ステロイド薬投与には通常は即効性がなく、効果発現に数時間を要することを認識しておく必要がある。
治療早期からステロイド薬の併用を考慮すべき患者は以下のとおりである。

  • 治療ステップ3 以上の長期管理がなされている。
  • 過去1年間に喘息発作による入院の既往がある。
  • 意識障害を伴う喘息発作や喘息発作治療のために気管挿管をされたことがある。

図4-1 急性発作に対する医療機関での対応のフロチャート(2歳未満)

図4-2 急性発作に対する医療機関での対応のフロチャート(2~15歳)

表4-1  医療機関での小児気管支喘息発作に対する薬物療法プラン(2歳未満)

表4-2 医療機関での喘息発作に対する薬物療法プラン(2~15 歳)

表4-3  全身性ステロイド薬の投与方法

②アミノフィリン点滴静注、持続点滴

アミノフィリンは安全性の観点から、特に外来での使用は減少している。発作治療時の血中濃度は8~15 μg/mLを目安とするが、血中濃度が18 μg/mLを超えると、濃度依存性に副作用を発現する症例が増加する。乳幼児ではテオフィリン血中濃度が15 μg/mL以下であっても痙攣を誘発する可能性が指摘されており、特に2歳未満では外来での使用は控えるべきである。アミノフィリンの投与量の目安を表4-4表4-5表4-6 に示すが、血中濃度測定を行わずに投与する場合には、安全性の観点から投与量を減量することが望ましい。2~15 歳の患児でアミノフィリン投与を推奨しない患者を表4-7に示す。また乳児喘息発作時のアミノフィリン注射薬使用に関する注意事項を表4-8に示す。

表4-4 アミノフィリン注射の投与量の目安(テオフィリン血中濃度が判明しているとき)

表4-5 喘息発作時のアミノフィリン投与量の目安(テオフィリン血中濃度が不明なとき)

表4-6 乳児喘息発作時のアミノフィリン注射液初期投与量、維持点滴量の目安

表4-7 中発作の治療でアミノフィリン投与を推奨しない患者(2~15 歳)

表4-8 乳児喘息発作時のアミノフィリン注射薬使用に関する注意事項

3)中発作に対する治療に反応良好の場合

(1)以下の場合、反応良好で帰宅可能と判断できる。

  • 咳嗽、喘鳴、陥没呼吸がほぼ消失し、呼吸数が正常に戻っている。
  • SpO2が97%以上、PEF値が自己最良値、または予測値の80%以上である。
  • 家庭での対応を含め、2回以上の吸入、あるいは追加治療が必要な場合は、可能な限り改善後 1時間程度の経過を観察して悪化がないことを確認することが望ましい。

(2)帰宅時には以下の指導を行う。

  • 今回の家庭での対応の適切性と注意すべき点を口頭で伝える。
  • 家庭でβ2刺激薬(吸入・内服・貼付)を数日間使用すること。
  • 必要に応じて内服のステロイド薬を処方する。ただし、間隔を空けずに(できれば翌日に)再度受診させる。
  • 帰宅後の悪化時の対応、悪化がない場合の再診日の設定。
  • 家庭に発作時のβ2刺激薬がなければ処方する。
  • 必要に応じて発作誘因の検討と対策、および長期管理薬を見直す。限られた時間内での有効な指導内容には限界があることに留意し、指導できなかった点は再診時に、あるいは救急処置が救急病院で行われた場合はかかりつけ医から行うようにする。

4)中発作に対する治療に反応不十分・不良の場合

(1)入院治療

入院治療の適応を表4-9 にまとめた。乳児喘息ではβ2刺激薬への反応が良好な場合を除き、原則入院加療とする。

表4-9 入院治療の適応

(2)合併症検索・他疾患の鑑別

改善が思わしくない場合には、再度合併症や他疾患の鑑別を考慮する。

4.大発作・呼吸不全に対する治療(入院での対応)

大発作・呼吸不全は、濃厚な治療が必要な状態であり、可能な限り早急に入院治療を行うべきである。大発作以上ではPaCO2が上昇して40mmHg以上となることが予想されるため、血液ガス分析でPaCO2を把握して治療すべきである。静脈血での二酸化炭素分圧もスクリーニングとしては有用である。発作治療と同時に合併症の検索を行う。呼吸不全の状態では、集中治療室での管理が望ましい。
中発作以下で受診したが入院が必要となった場合の治療は、その程度に応じた治療を継続してもよい。(図4-1図4-2表4-1表4-2

1)大発作・呼吸不全に対する初期治療

(1)酸素投与と末梢血管ルートの確保

当初から酸素投与を開始して、SpO2を参考に流量を調整する。末梢静脈ルートを確保し、各種薬物投与を行えるように準備する。

(2)β2刺激薬吸入・ステロイド薬全身投与

β2刺激薬吸入を20~30 分ごとに3回まで反復して行う。症状に改善傾向が認められれば、2時間ごとに反復することが可能である。発作強度が強い場合や外来ですでにβ2刺激薬吸入を複数回行っている場合には、イソプロテレノール持続吸入を初めから開始してもよい。
当初から十分量のステロイド薬全身投与を併用する(表4-3)。全身状態が悪いことから静注投与が選択される場合が多いが、経口投与でも構わない。状態によっては投与量増量を考慮する。通常は3~5日間の使用で十分な効果が期待できる。この場合の十分な効果とは、聴診上の呼吸副雑音の完全な消失までを意味するものではなく、努力呼吸がなくなるなど臨床的な改善が明らかとなることを指している。

(3)イソプロテレノール持続吸入療法

イソプロテレノール持続吸入療法の詳細は表4-10に示す。発作強度の推移や副作用を詳細に経時的に観察して、使用する薬剤の量を決定する。本療法中は心電図モニター、SpO2モニターを装着して心拍数、不整脈の有無などを確認し、さらに血圧、呼吸数も観察する必要がある。心疾患を合併している場合には特に注意が必要である。また、血中電解質、特にカリウムの異常の有無を確認すべきである。
治療効果はあるが十分でない場合には、イソプロテレノールの増量を考慮するとともに再度合併症の有無を検討する。反応に乏しい場合などは、速やかに人工呼吸管理に移行する。

表4-10 イソプロテレノール持続吸入療法実施の要点

(4)アミノフィリン静注、持続点滴

アミノフィリン静注は、最近ではその使用に否定的な見解もあり、使用される機会が減っている。しかし、大発作以上であれば挿管の可能性も高くなるため積極的に考慮してもよい。アミノフィリンの投与量の目安を表4-4表4-5表4-6に示す。ただし、痙攣既往者、中枢神経系疾患合併例では推奨されない。また発熱を伴う乳幼児では慎重な判断が求められる。

2)大発作・呼吸不全に対する追加治療

(1)人工呼吸管理

呼吸不全と考えられる場合には、人工呼吸管理を行う必要がある。イソプロテレノール持続吸入の量を増量することも考慮してもよいが、意識混濁があるなどの場合には人工呼吸管理をためらうべきではない。なお、非侵襲的陽圧管理療法(noninvasive positive pressure ventilation, NPPV)は、成人喘息では一定の有用性が明らかになりつつあるが、小児での適応や有用性はいまだ明確でない。

(2)アシドーシスの補正

喘息発作時に見られるアシドーシスは呼吸性アシドーシスであり、人工呼吸管理を含む適切な呼吸管理によって改善が期待できるものである。

3)気管挿管による人工呼吸管理の適応基準

①呼吸状態が改善しないにもかかわらず、呼吸音の低下、喘鳴の減弱が認められる。
②意識状態が悪化し傾眠状態~昏睡になる。
③十分な酸素を投与してもPaO2が60mmHg未満である。
④PaCO2が65mmHg以上、または1時間に5mmHg以上上昇する。

4)気管挿管による人工呼吸法の実際

挿管に際しては、できるだけ麻酔科医などの挿管経験の豊富な医師に依頼することが望ましい。
①マスク、酸素による補助呼吸を行う。
②アトロピン硫酸塩(0.01mg/kg筋注または静注)およびジアゼパム(0.2 ~0.5mg/kg静注)、ミダゾラム(0.08~0.1mg/kg静注)あるいは静注用ケタミン塩酸塩(1mg/kg静注)の投与後、筋弛緩薬であるスキサメトニウム(0.8~1.0mg/kg静注)を投与して挿管する。なおバルビタール剤は禁忌である。
③挿管後しばらくTピースによる用手換気を行う。
④人工呼吸器の設定は下記を参考にする。
⑤挿管後もそれまでの薬物療法が奏効しない場合は、気管支拡張作用のあるセボフルランなどの揮発性吸入麻酔薬を用いることも可能であるが、明確な投与基準はない。

5)人工呼吸管理の設定

大発作・呼吸不全の状態では気道抵抗が上昇しており、人工呼吸においてもある程度高い気道内圧を設定する必要がある(気胸などへの注意が必須)。また、十分な呼出量を得るために十分な呼気時間を設定する必要がある。すなわち、呼吸回数を少なく設定することで呼出量を確保し、機能的残気量が過剰に増えないように設定する。検査値としては当初はpHを7.2 以上に、PaO2を60mmHg以上に保つことを目標とする。一方、PaCO2の上昇は少なくとも当初は許容される。これはair leak 症候群などの致命的な合併症を予防するためである。

6)入院治療の調整と退院の基準

症状が改善傾向を示せば、その程度に応じて治療を調整する。一般には、①人工呼吸管理、②イソプロテレノール持続吸入療法漸減中止、β2刺激薬吸入に変更、③全身性ステロイド薬投与、④β2刺激薬吸入(漸減中止)の順で中止する。
治療調整のタイミングは、陥没呼吸を認めない、酸素投与を必要としない程度にまで改善させた時点でステロイド薬全身投与を中止することが望ましい。最終的に、退院後家庭で継続する薬剤だけ(短期間で終了する発作治療薬を含む)として以下の状態が1~2日持続することを確認できれば退院としてよい。

  • 咳嗽、喘鳴、陥没呼吸が十分に消失し、呼吸数が正常に戻っていること。
  • SpO2 が夜間睡眠中を含め97%以上で安定していること。
  • PEF値が自己最良値(あるいは予測値)の80%以上で安定していること。
  • (6歳以上では可能な限り)フローボリューム曲線の正常化を確認。さらに可能であればβ2刺激薬吸入前後での変化の有無を確認し、外来再診時に再度評価する。

7)退院時の指導

退院時の指導には以下のものが含まれるべきである。指導は退院日以前から計画的段階的に行うことが望ましい。

  • 喘息の病態
  • 今回の発作強度および患者の重症度
  • 今回の発作対応の適切性と改善すべき点
  • 予防的治療と発作治療の違い
  • 喘息発作強度の判断方法と発作時対応(家庭での対応を念頭に)
  • ( 5歳以上では)PEFモニタリングとその活用方法
  • 家庭におけるβ2刺激薬(吸入・内服)処方と使用法の説明
  • 上記を踏まえた喘息個別対応プランの作成と説明
  • 退院後の発作治療薬の継続期間
  • 発作誘因の検索と対策
  • 長期管理薬の見直しおよび吸入方法の指導
  • 帰宅後の悪化時の対応、悪化がない場合の再診日

5.代表的な発作の治療薬の注意点

1)β2刺激薬吸入

吸入薬は、吸入手技が確実であれば、効果の発現が早く確実であり副作用も少ないが、使用が簡便であるために過剰使用に陥りやすい欠点があり、家庭での使用については患者教育の徹底が不可欠である。乳児喘息に用いる場合、吸入による薬物の肺への沈着率が不安定であるために、吸入療法の薬効が年長児に比して劣ることに注意する。特に吸入時に啼泣が強いと吸入効率が低下する。副作用として動悸、頻脈、不整脈、振戦、嘔気、嘔吐などがある。

2)イソプロテレノール

イソプロテレノールはβ2 作用と同等のβ1 作用を有する。イソプロテレノールの利点はβ2 作用にあり、最も強力な固有活性を有し、かつ持続時間が極めて短いために持続吸入でも管理しやすいことにある。一方、欠点はβ1作用に起因する循環系の副作用である。中でも不整脈は最も注意すべき副作用である。
吸入用イソプロテレノール製剤にはアスプール®0.5%、1%があり、d体とl体が等量含まれており、d 体にはほとんど活性がない。注射用製剤プロタノール®Lはl 体のみを含むが、吸入薬としての保険適応はない。アスプール®とプロタノール®L間では、l 体が等量であれば臨床効果に大きな差はないとされている。

3)全身性ステロイド薬

全身性ステロイド薬には通常は即効性がなく、投与後に少なくとも4時間かかる。経静脈投与と経口投与の間では有効性は同等であるという報告がある。全身性ステロイド薬の投与は症状の改善が得られれば早期に中止する。数日間の投与ならば、副腎皮質機能に対して大きな抑制は見られない。
静注用ステロイド薬を用いる場合には、まずアスピリン喘息患者に合併することがあるステロイド過敏症に注意が必要である。ステロイド製剤に含まれる防腐剤のパラベンやコハク酸エステルのステロイドそのものが関与しているとされている。ヒドロコルチゾンを用いる場合は、反復投与によってナトリウム蓄積、浮腫が起こる可能性があるため、数日間までに止め、その後 は他のステロイド薬に変更する必要がある。最後にソル・メドロール®静注用40mgに添加されている乳糖には微量の乳タンパク質が含まれており、牛乳アレルギー患者にとって過敏症の原因となる恐れがある。
全身性ステロイド薬の使用が1か月に3日間以上繰り返される場合は、予防薬の不足のほか、悪化因子を詳細検討する必要があるため、可能な限り小児アレルギー専門医へ紹介することが望ましい。

4)テオフィリン薬

発作時にはアミノフィリン注射薬が使われることがある。アミノフィリンは80~85%のテオフィリンを含む。内服のテオフィリン徐放製剤に即効性は期待できない。また、坐剤は血中濃度管理が困難である。テオフィリン薬は血中濃度に依存して作用するが、有効濃度域と副作用域が近接している。さらにその代謝は個人差の他、併用薬、発熱、感染、食事などの影響も受けるので、管理には血中濃度モニターが必要となる。

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