第10章 食物アレルギーの特殊型

[ 要 旨 ]

  1. 1食物アレルギーによる症状は臓器ごとに重症度分類を用いて評価し、重症度に基づいた治療を行う。
  2. 2アドレナリン筋肉注射はアナフィラキシーに対する第一選択薬である。ステロイド薬の効果のエビデンスは
      立証されておらず、二相性反応の予防として用いる。
  3. 3皮膚症状に対しては鎮静作用の少ない第二世代のヒスタミンH1受容体拮抗薬の内服、下気道症状に対しては
      β2刺激薬吸入の効果が期待できる。
  4. 4アナフィラキシーでは仰臥位ならびに下肢挙上のポジショニングを行い、必要により高流量酸素投与、生理食塩水
      もしくは各種リンゲル液の急速補液を行う。
  5. 5アナフィラキシーでは、一旦症状が改善した後に再び症状が増悪することがあるため、十分な観察時間と本人、
      保護者への指導が必要である。
  6. 6α受容体遮断作用を有する抗精神病薬とアドレナリンは添付文書上併用禁忌であるが、同抗精神病薬が使用されて
      いる患者がアナフィラキシーに陥ったときには、医師の裁量のもと救命のためにアドレナリンを使用することは
      許容される。
表10-1 臨床所見による重症度分類

*1:血圧軽度低下:1歳未満<80mmHg、1~10歳<[80+(2×年齢)mmHg]、11歳~成人<100mmHg
*2:血圧低下  :1歳未満<70mmHg、1~10歳<[70+(2×年齢)mmHg]、11歳~成人<90mmHg

(柳田紀之, ほか.日小ア誌.2014;28:201-10.より改変)

誘発症状は各臓器(皮膚・粘膜、呼吸器、消化器、神経、循環器)の即時型症状について、グレード1(軽症)、グレード2(中等症)、グレード3(重症)に分類する.重症度判定は最も強い臓器症状によって行う.

図10-1 重症度に基づいた症状に対する治療

各臓器の誘発症状の重症度を評価し、重症度に応じた治療を行う。アドレナリン筋肉注射の適用はグレード3の症状を認めたときである.ただし、グレード2の症状でも過去に重篤なアナフィラキシーの既往がある場合、症状の進行が激烈な場合、循環器症状を認める場合、呼吸器症状で気管支拡張薬の吸入でも改善しない場合は、アドレナリンの投与を考慮する.

表10-2 小児適用のある、鎮静作用の 少ない第2世代ヒスタミンH1受容体拮抗薬

※いずれも蕁麻疹、皮膚疾患(皮膚瘙痒症)に対する用量

第一世代のヒスタミンH1受容体拮抗薬は副作用として眠気やだるさがあり、症状としての循環器症状や神経症状との鑑別が困難となるため、安易な投与は控えるべきである.

表10-3 アドレナリンの薬理学的作用、副作用

わが国のアドレナリン注射薬の添付文書には、ブチロフェノン系、フェノチアジン系などの抗精神病薬、α遮断薬との併用は昇圧作用の反転により低血圧が見られることがあるために併用禁忌と記載されている.しかし、本ガイドラインでは併用禁忌薬を使用している患者がアナフィラキシーに陥ったときは、医師の裁量のもと救命のためにアドレナリンを使用することは許容されると記載した.

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