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疫学委員会・喘息死検討部会 「子どもの喘息死ゼロを目指して」

子どもの喘息死ゼロを目指して

日本小児アレルギー学会は、1989年秋、喘息死委員会を組織し、1990年2月、第1回喘息死委員会を開催しました。以来、喘息患者さんが死亡した場合、原因を問わず委員会(2011年から喘息死検討部会に改組)に登録するよう求め、喘息死の原因を探り、防止するために活動してきました。(登録された症例は、個人が特定できないように数値化されており、原本は破棄され、プライバシーは保護されています)
2010年までに236例が登録され、そのうち207例が喘息に関連した死亡とされ、1999年頃から減少し、最近は、1~3例以内に止まっています(図1)。
登録例の男女別死亡年齢を見ると、乳幼児0~3歳と思春期12~16歳に多い、二峰性を示します(図2)。
厚生労働省の統計によるわが国の喘息死の動向を見ると、総数(全年齢)の喘息死亡率(人口10万人対、図3)は減少し、二回にわたり増加していた5~34歳の喘息死亡率(図4)も減少して低率を維持しています。小児でも、二回にわたり増加した5~19歳の死亡率も減少し、高かった0~4歳の喘息死亡率もようやく減少しました(図5)。
0~19歳の喘息死亡数も、表1のごとく1997年頃から順調に減少しています。

しかし、小児の喘息死について、以下の点に注目する必要があります。

1.
喘息死は軽症、中等症であっても稀には起こる
  喘息死委員会の2010年の集計では、1988~1997年に死亡した160例では軽症18%、中等症20%、重症29%、不明・記載なし34%、喘息死が減少した1998~2010年に死亡した45例でも軽症20%、中等症16%、重症22%、不明・記載なし42%で、軽症と中等症の占める割合は重症より多く、死亡前に必ずしも重症ではありませんでした(図6)。喘息死の危険性は重症であるほど高いが、軽症であっても稀には起こる可能性があります。
2.
喘息死に至った要因
  予期せぬ急激な悪化、適切な救急受診の遅れが関与した死亡が多く、適切な受診時期の遅れを来した要因として、発作を軽く見過ぎたり、発作救急薬の短時間作用型β₂刺激薬(SABA)定量噴霧式吸入器(pMDI)やネブライザーへの過度な依存などが多かったと報告されています。
3.
吸入ステロイド薬(ICS)の低い使用率、自己判断による中断・怠薬
  ICSの必要十分な投与は、喘息発作を抑制し、気道過敏性亢進を改善し、喘息死を減少させると報告されています。
喘息死亡例の死亡1ヶ月前のICSの使用状況は、ICSの普及が進み喘息死が減少した1998~2009年の死亡例でも、不明・無記入を除くと、投与中だったのは38%に過ぎませんでした。喘息死という結果から見ると、治療不足であったと言わざるを得ません。
ICSについて、乳幼児では導入の遅れや低い普及率、思春期以降では自己判断による中断や怠薬が問題となっています。
小児気管支喘息治療・管理ガイドラインに沿って、医師に相談しながら、適切にICSを使用することが必要です。
4.
β₂刺激薬の誤った使用
  短時間作用性β2刺激薬(SABA)は発作救急薬として不可欠ですが、週1回以上必要な場合は治療をステップアップする必要があり、SABAの頻回吸入のみによる長期管理はかえって喘息を悪化させ、喘息死を増加させることが報告されています。
また、SABAは小発作では有効ですが、発作が重くなるとごく短時間しか効かなくなり、緊急に医療機関で酸素の吸入や他の治療を併用しないと死に至る可能性もあります。過去にSABA吸入で軽快した体験に頼って病院を救急受診するのが遅れ、死亡した症例が多いとされています。
また、長時間作用性β₂刺激薬(LABA)のみによる長期管理も喘息を悪化させ、喘息死の危険性を高めることが報告されており、使用するときはICSを必ず併用する必要があります。
5.
喘息死について理解
  マスコミなどの報道等によって「喘息で死ぬこともある」との認識が高まると喘息死が急激に減少する現象が二度にわたってみられました。最近、再び、喘息死の危険性に関する理解の度合が再び低下してきたとの報告があり、注意が必要です。

喘息死を予防するために以下を推奨します。

1.
喘息死の危険性の認識
  喘息死を避けるためには、先ず、患者や家族・教育関係者などの患者を取り巻く人々が「軽症であっても稀には喘息で死亡することはある」ことを理解し、急性発作に適切に対応すると共に、長期管理を徹底することが必要です。
2.
急性発作への対応
  1) 発作程度の判断
    急性発作に適切に対応するためには、まず、発作の程度を適切に判断し、発作程度に応じて迅速に治療を開始する必要があります。発作程度の判断は表2を参考にします。
  2) 急性発作への医療機関以外における治療プラン
    医療機関以外で急性発作が起きたときの治療プランを、図7図8を参考にして、主治医と相談して立てておきます。
  3) SABAの適正な使用
    SABAの吸入にあたっては、効果は発作程度が軽いと有効ですが、重症化すると効果は限定的です。いたずらに効果が現れるのを待って吸入を繰り返すことなく、効果が得られない場合は指示に従って吸入しながら医療機関を救急受診して下さい。
週1回以上SABAの吸入が必要な場合は、治療をステップアップする必要があることを忘れないで下さい。
  喘息死に至る最終発作は急激に増悪することが多い。重症な発作の時は、歩行すると急激に悪化し、酸素投与も必要なので、躊躇せず救急車を依頼することを考えて下さい。
3.
長期管理の徹底
  喘息死を防ぐためには、早期に喘息の診断を受けて、アレルゲンの除去・回避を心がけ、定期的に受診して、小児気管支喘息管理・治療ガイドラインを参考にして医師と相談しながら、ICSなどによる抗気道炎症療法を行っていく必要があります。
さらに、患者さんに適した治療を進めるため、喘息日誌、ピークフロー・モニタリング、小児喘息コントロールテストなどを利用し、発作を必要十分に抑制して、長期間、発作がない状態を維持して、寛解を目指します。
喘息死を避けるためには、自己判断による治療の不適切なステップダウンや中断を避ることが重要です。

 

 

患者、家族、周囲の方々、医療関係者の更なる喘息への正しい理解と対応・努力で、小児の「喘息死ゼロ」が達成されることを期待しています。

 

平成25年7月
日本小児アレルギー学会
疫学委員会・喘息死検討部会

 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

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