第4章 予知と予防

[ 要 旨 ]

  1. 1食物アレルギーの発症リスクに影響する因子として、家族歴、遺伝的素因、皮膚バリア機能、出生季節などが
      検討されているが、中でもアトピー性皮膚炎の存在が重要である。
  2. 2食物アレルギーの発症予防のため、妊娠中や授乳中に母親が特定の食物を除去することは、効果が否定されている
      上に母親の栄養状態に対して有害であり、推奨されない。
  3. 3ハイリスク乳児に対して特定の食物の摂取開始時期を遅らせることは、発症リスクを低下させることには
      つながらず、推奨されない。
  4. 4完全母乳栄養がアレルギー疾患の予防という点において優れているという十分なエビデンスはない。
  5. 5ハイリスク乳児への新生児期からの保湿スキンケアがアトピー性皮膚炎発症を予防する可能性が報告されたが、
      食物アレルギーの発症予防効果は証明されていない。
図4-1 食物アレルギーのリスク因子

食物アレルギーの発症に影響を与える因子として、家族歴や遺伝的素因、環境中の食物アレルゲン、出生季節・日光照射、皮膚バリア機能の低下などが知られており、中でもアトピー性皮膚炎の存在が重要とされる。

表4-2 食物アレルギー発症予防に関するまとめ

*1:ピーナッツの導入を遅らせることがピーナッツアレルギーの進展のリスクを増大させることにつながる可能性が報告され、海外、 特にピーナッツアレルギーが多い国では乳児期の早期(4~10か月)にピーナッツを含む食品の摂取を開始することが推奨されている。
*2:アレルギーを発症しやすい食物(ピーナッツ、鶏卵)を生後3か月から摂取させることが、生後6か月以降に開始するよりも食物アレルギーの発症リスクを低減させる可能性が海外から報告されたが、安全に耐性を誘導する食物の量や質についてはいまだに不明な点があり、研究段階といえる。

●近年のコクランレビューにより、妊娠・授乳中の母親の食物除去による食物アレルギー発症予防効果は否定されている。
●完全母乳栄養と食物アレルギーの関連については、予防に有用である、発症に関連しない、発症リスクである、と報告が分かれている。
●近年、ハイリスクの乳児において、ピーナッツおよび鶏卵の摂取開始時期を遅らせることが発症リスクを増加させるという報告がなされた。しかし、乳児期に安全かつ効果的に耐性を誘導させる食物の量や質、方法については現在も研究段階にあり、今後の課題である。

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