[ 要 旨 ]

  1. 1鶏卵アレルギーは、小児の即時型食物アレルギーの中で最も多い。
  2. 2耐性化率に関連する主な因子として鶏卵やオボムコイド特異的IgE 抗体価や皮膚プリックテストの膨疹径、全身の誘発症状の既往などが挙げられる。
  3. 3鶏卵アレルゲンは、Gal d 1(オボムコイド)、Gal d 2(オボアルブミン)、Gal d3(オボトランスフェリン)、Gal d 4(リゾチーム)などからなる。ウズラ卵やアヒル卵との交差抗原性が報告されている。オボアルブミンは加熱により凝固しやすいが、オボムコイドは加熱や消化酵素に安定である。
  4. 4診断に関しては、問診にて病歴を確認し、オボムコイドや卵白特異的IgE 抗体価を参考にして、食物経口負荷試験の判断を行う。乳児アトピー性皮膚炎で、卵白特異的IgE 抗体価が陽性で摂取歴のない場合は、抗体価の数字のみで除去を続けることのないようにする。陽性の予測にはプロバビリティカーブを参考にする。
  5. 5栄養指導では、調理条件(加熱温度と加熱時間)により抗原性が変わることに注意して具体的な指導を行う。加熱卵白が摂取できなくても加熱卵黄は摂取できることがある。
  6. 6卵殻カルシウムにはごく微量の抗原が含まれているが、通常は摂取可能なことが多い。

表12-1 鶏卵アレルギーの自然歴(主なもの)

報告によりばらつきが大きいが、総じて高い割合で耐性を獲得していく。我が国の報告では6歳で66%が耐性化するとされる。


表12-2 主な鶏卵(卵白)アレルゲン

卵白の主なアレルゲンは、オボムコイドとオボアルブミンである。オボムコイドは加熱によって変性しにくい性質を持つ。


表12-3 プロバビリティカーブ報告のまとめ:鶏卵

プロバビリティーカーブは負荷試験が陽性となる確率を示すものであり、あくまで参考値である。年齢、負荷食品、負荷量、測定法により予測値が異なることに注意する。


[ 要 旨 ]

  1. 1牛乳アレルギーは、多くは乳児期に発症し、小児の即時型食物アレルギーの中で2番目に多い。
  2. 2耐性化率に関連する主な因子として牛乳特異的IgE 抗体価や皮膚プリックテストの膨疹径が挙げられる。
  3. 3牛乳タンパクは、カゼインと乳清タンパク質に分けられる。カゼインは加熱変性を受けにくく強いアレルゲン性を持つ。乳清タンパク質には、α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリン、血清アルブミンなどが含まれる。
  4. 4問診にて病歴を確認し、牛乳特異的IgE 抗体価を参考にして、食物経口負荷試験の判断を行う。陽性の予測にはプロバビリティカーブを参考にする。
  5. 5食べることを目指した食事指導では、乳製品によってタンパク質の含有量が異なることも考慮して摂取可能な範囲を指定する。
  6. 6マフィンやパンなど、小麦と混ぜて高温で焼かれた食品では、反応性の低下が認められる。
  7. 7牛乳除去によりカルシウムが不足しやすいため、カルシウム豊富な食品の摂取や、牛乳アレルゲン除去調製粉乳などの摂取を推奨する。
  8. 8乳糖にはごく微量の抗原が含まれているが、通常は摂取可能なことが多い。
  9. 9乳成分が含まれる薬剤に注意を払う。

表12-4 牛乳アレルギーの自然歴(主なもの)

報告によりばらつきが大きいが、総じて高い割合で耐性を獲得していく。我が国の報告では6歳で84.8%が耐性化するとされる。


表12-5 主な牛乳アレルゲン

牛乳の主なアレルゲンは、カゼインとβ-ラクトグロブリンである。


表12-6 プロバビリティカーブ報告のまとめ:牛乳

プロバビリティーカーブは負荷試験が陽性となる確率を示すものであり、あくまで参考値である。対象と経口負荷試験の方法により結果が異なることに注意する。年齢、負荷食品、負荷量、測定法により予測値が異なることに注意する。


表12-7 ミルクアレルゲン除去食品

わが国で使用されている牛乳アレルゲン除去調製粉乳の濃度、分子量、組成を示す。


[ 要 旨 ]

  1. 1本章では、主として小児の即時型小麦アレルギーについて解説する。成人に多い小麦依存性運動誘発アナフィラキシーについては、第13 章を参照のこと。
  2. 2即時型小麦アレルギーの多くは乳児期に発症し、乳幼児期の即時型食物アレルギーの中で3 番目に多い。
  3. 3耐性化率に関連する主な因子として、小麦特異的IgE 抗体価や小麦プリックテストの膨疹径が挙げられる。
  4. 4小麦タンパク質は、塩可溶性のアルブミン・グロブリン画分と、塩不溶性のグルテンに大別される。グルテンはさらに、アルコール可溶性のグリアジンと、不溶性のグルテニンに分けられる。大麦やライ麦との交差抗原性がみられる。
  5. 5小麦アレルギーの診断において、小麦特異的IgE 抗体検査は特異度が低い。一方、ω-5 グリアジン特異的IgE 抗体検査は、特異度が高いが感度が低いため、両者を組み合わせて判断を行う。
  6. 6醤油の醸造過程で使用される小麦タンパク質はほとんどがアミノ酸まで分解されており、大部分の小麦アレルギー患者は摂取可能である。

表12-8 小麦アレルギーの自然歴(主なもの)

報告によりばらつきが大きいが、総じて高い割合で耐性を獲得していく。我が国の報告では6歳で66.3%が耐性化するとされる。


表12-9 主な小麦アレルゲン

小麦には、多くのアレルゲンコンポーネントが存在して、それぞれ異なる病態に関与することが知られている。


表12-10 プロバビリティカーブ報告のまとめ:小麦

プロバビリティーカーブは負荷試験が陽性となる確率を示すものであり、あくまで参考値である。年齢、負荷食品、負荷量、測定法により予測値が異なることに注意する。


[ 要 旨 ]

  1. 1ピーナッツアレルギーは即時型症状で発症することが多い。耐性化は約20%とする報告が多い。
  2. 2アレルゲンコンポーネントのうちAra h 2(2S アルブミン)は、即時型アレルギー症状誘発と関連がある。
  3. 3Ara h 2 特異的IgE 抗体検査は、4.0 UA/mL 以上で95%陽性的中率を示す。
  4. 4ピーナッツは豆類であり、木の実類とまとめて除去する必要はない。

表12-11 ピーナッツアレルギーの自然歴

ピーナッツアレルギーの耐性化率は一般的に低いと考えられている。オーストラリア、英国、米国のいずれの研究においても耐性化率は約2割と報告されている。


表12-12 ピーナッツアレルギーに対する特異的 IgE 抗体検査の診断精度

血液検査ではピーナッツおよびAra h 2に対する特異的IgE 抗体検査が保険収載されている。わが国での研究では95%PPVはAra h 2 特異的IgE 抗体価4.0 UA/mL 以上と報告されている。


[ 要 旨 ]

  1. 1木の実類アレルギーは即時型症状で発症することが多い。予後に関する報告は多くないが、耐性化率は低いと考えられている。
  2. 2木の実類の主要アレルゲンは貯蔵タンパク質である。クルミとカシューナッツのアレルゲンでは、各々2S アルブミンに属するJug r 1、Ana o 3 と臨床症状との関連がある。
  3. 3木の実類の間での交差抗原性は認められるが、実際には摂取できる場合も多いため、それぞれについて除去の必要性を判断する。ただし、クルミとペカンナッツ、カシューナッツとピスタチオの間には強い交差抗原性がある。

[ 要 旨 ]

  1. 1大豆アレルギーは乳幼児期に発症する即時型症状、もしくは学童期以降に発症するカバノキ科花粉症に伴う花粉-食物アレルギー症候群が多い。乳児期に発症する即時型大豆アレルギーの耐性化率は高く、多くは幼児期までに寛解する。
  2. 2大豆特異的IgE 抗体陽性であっても実際に症状を呈する大豆アレルギーの割合は少なく、即時症状の確認や食物経口負荷試験での診断が重要である。
  3. 3大豆油や醤油、味噌は症状なく摂取できることが多い。納豆は発酵により低アレルゲン化が期待できる。

表12-13 大豆アレルギーの自然歴

乳幼児期に発症する即時型大豆アレルギーの耐性化率は高い。わが国での乳児期に発症した大豆アレルギー児の研究では3 歳までの耐性獲得率は78%と報告されている。


[ 要 旨 ]

  1. 1ゴマアレルギーは幼児期に即時型症状で発症することが多い。予後に関する報告は多くないが、他の種実類と同様に耐性化率は低いと考えられている。
  2. 2ゴマ特異的IgE 抗体検査は特異度が低い。
  3. 3ゴマアレルギーでもゴマ油は摂取できる場合が多い。粒ゴマの形態よりすりゴマの形態で症状が誘発されやすい。

[ 要 旨 ]

  1. 1ソバアレルギーは幼児期に即時型症状で発症することが多い。予後に関する報告は多くないが、長期間の除去後に一定数は耐性獲得する可能性がある。
  2. 2診断にはソバの皮膚プリックテストがソバ特異的IgE 抗体検査よりも有用である。

表12-14 ソバアレルギーの診断有用性

ソバのSPT はソバ特異的IgE 抗体検査よりも診断に有用である。ソバのOFC を実施する前にはSPT の評価が望ましい。


[ 要 旨 ]

  1. 1甲殻類・軟体類・貝類アレルギーは学童期以降、即時型症状もしくは食物依存性運動誘発アナフィラキシー(第13 章参照)で発症することが多い。自然歴に関する報告はほとんどないが、耐性化率は低いと考えられている。
  2. 2主要アレルゲンはトロポミオシンで、熱および消化酵素に耐性を有する。甲殻類間で強い交差抗原性を示すが、ダニなど吸入抗原との交差抗原性も確認されている。甲殻類間は臨床的交差反応性が高い一方で、甲殻類と軟体類や貝類とは交差反応性は高くない。
  3. 3抗原特異的IgE 抗体検査は感度、特異度ともに不十分であり、食物経口負荷試験などによって症状の有無を確認する。
  4. 4基本的には甲殻類、軟体類、貝類を除去していても栄養的な問題は生じにくい。

[ 要 旨 ]

  1. 1魚類アレルギーは乳幼児期に発症する即時型症状、もしくは成人における職業性曝露などによる即時型症状や接触蕁麻疹で発症することが多い。自然歴に関する検討が不足しているが、乳幼児期発症の即時型症状の場合、一定数は耐性獲得する可能性がある。
  2. 2主要アレルゲンはパルブアルブミンで、熱および消化酵素に耐性を有するが、高温・高圧処理により低アレルゲン化する。ほぼすべての魚種に存在し交差抗原性を示すため、複数の魚種に症状を示すことが多い。
  3. 3多くの魚種で抗原特異的IgE 抗体価が陽性となりやすいが、魚種ごとに食物経口負荷試験などによって症状の有無を確認する必要がある。ヒスタミン中毒やアニサキスアレルギーとの鑑別が必要である。
  4. 4魚類全般の除去によりビタミンD が不足しやすい。卵黄やきくらげ、干ししいたけなどで補う。

[ 要 旨 ]

  1. 1魚卵アレルギーは即時型症状で発症することが多く、わが国において魚卵は1~6歳で2番目に多い新規発症アレルゲンである。原因食物はイクラが多い。
  2. 2イクラの主要アレルゲンは、ビテロジェニンのβ’-コンポーネントであり、魚卵間で交差抗原性を示すが、実際には摂取できることもある。
  3. 3イクラは、食物経口負荷試験で陽性の予測にプロバビリティーカーブが報告されている。

[ 要 旨 ]

  1. 1果物・野菜アレルギーは乳幼児に発症する即時型症状もしくは花粉-食物アレルギー症候群やラテックス-フルーツ症候群(第14 章参照)、食物依存性運動誘発アナフィラキシー(第13 章参照)で発症することが多い。
  2. 2臨床症状やアレルゲン特性は、感作経路の違いにより大きく異なる。自然歴に関する報告は少ないが、乳幼児期発症の場合、一定数は耐性獲得する可能性がある。
  3. 3代表的なアレルゲンに、加熱や消化酵素に不安定なPR-10、プロフィリンと、加熱や消化酵素に耐性を有する脂質輸送タンパク質(LTP)、gibberellin-regulatedprotein(GRP)がある。
  4. 4粗抗原特異的IgE 抗体検査は感度・特異度ともに不十分であり、問診や皮膚テスト、食物経口負荷試験と合わせて診断を行う。
  5. 5PFAS を除く果物アレルギーの場合、加熱した果物・野菜を含めて除去が必要である。

表12-17 果物・野菜の生物学的分類と主なアレルゲン

果物・野菜の代表的なアレルゲンには、PR-10やプロフィリンのような熱に不安定なアレルゲンファミリーと、LTPやGRPのような熱に耐性を有するアレルゲンファミリーがある。