[ 要 旨 ]

  1. 1アレルギー疾患対策基本法が平成27 年12 月25 日に施行され、アレルギー疾患への対策は法律により定められるところとなった。
  2. 2学校・幼稚園、保育所などにおけるアレルギー疾患への対応の原則は「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」、「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」に示されている。
  3. 3アレルギー疾患を有する児が学校・幼稚園、保育所などにおいて何らかの配慮を希望する場合は、「生活管理指導表」を提出する。医師はガイドラインに習熟し、児の生活に関する取り組みや状況について、共有すべき必要な情報を記載する。
  4. 4給食における対応は安全性の確保を最優先とする。このため給食提供は、家庭で行う必要最小限の除去とは異なり、完全除去か解除かの二者択一による対応を基本とする。
  5. 5医師は、学校・幼稚園、保育所などにおけるアレルギー対応委員会などやアドレナリン自己注射薬を含めた緊急時対応に対して、積極的かつ適切な助言・指導を行うことが期待されている。
  6. 6宿泊や外食を伴う学校行事・海外旅行などにあたっては、現地の食物アレルギーに対する社会事情や救急医療体制、予定される食事内容などについて十分な情報収集などの事前準備を行う。

表18-1 「アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針」の概要

「アレルギー疾患対策基本法」が平成27年12月25日に施行された。「アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針」は対策基本法の第十一条に定められる指針であり、その施策を具体的に示したいわば国のガイドラインとして平成29 年3 月21 日に策定されたものである。

図18-1 学校・幼稚園、保育所などにおける生活管理指導表の活用の流れ

アレルギー疾患の多くは乳幼児期に発症することが多く、入学・入園時の健康診断や説明会、進級、転入時および新規発症時に対象者を把握する。保護者から「食物アレルギーのために、配慮を希望する」などと申し出があった場合には医師の診断指示に基づいた生活管理指導表(図18-2、図18-3)の提出が必須となる。保護者と連携し適切に対処するため、それをもとに面談を行い、施設長を委員長としたアレルギー対応委員会を設立し、組織として対応する。


図18-2 学校生活管理指導表(アレルギー疾患)

2015年文部科学省「学校給食における食物アレルギー対応指針」において、学校で食物アレルギー対応を求める場合には、学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)の提出が必須とされている。医師の正しい診断に基づいて、根拠を持ったアレルギー対応をとるための基本となるもので、学校での生活の質、安全性を左右する重要な書類である。2020年に改訂版が発行されている。


図18-3 保育所におけるアレルギー疾患生活管理指導表[表面]

2011年に策定された「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」において様式が公表され、2019年に改訂がなされた。学校と同様、保育所においても食物アレルギー対応を求める場合には提出が必須である。保育所では昼食のみならず間食や延食、夕食の提供や、アレルギー用調製粉乳に対しても配慮が必要となる。乳児期は「除去根拠」として④未摂取が選択される場合が多く、変化があった場合にはその都度情報を更新し再提出することが望ましい。


表18-2 海外旅行時に必要となる準備のポイント

海外旅行の際には、現地の食物アレルギーに関する社会情勢や緊急医療体制、宿泊先のアレルギー対応食の可否やメニューの原材料などを確認する。特に修学旅行の場合は、重症度に合わせた最大限の配慮を依頼・調整してもらうことを、学校側と旅行会社および患者家族の三者で打ち合わせることが望ましい。