[ 要 旨 ]

  1. 1食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-inducedanaphylaxis, FDEIA)は特定の食物摂取後の運動負荷によってアナフィラキシーが誘発される病態である。
  2. 2原因食物は小麦、甲殻類と果物が多い。食後2 時間以内の運動による発症が大部分であるが、食後最大4 時間を経過して発症したとする報告もある。
  3. 3発症機序はIgE 依存性で、運動はIgE 依存性即時型食物アレルギーの誘発閾値を低下させる因子の一つといえる。運動以外でも、非ステロイド性抗炎症薬の内服やアルコールの摂取でも同様の病態が起こり得る。
  4. 4発症頻度は中学生約6,000 人に1 人で、初回発症年齢のピークは10~20 歳代である。
  5. 5診断は問診とアレルギー検査から原因食物を絞り込み、誘発試験を実施する。しかし、誘発試験の感度と再現性は必ずしも高くない。
  6. 6再発症の防止には原因食物の確定ならびに患者と保護者への教育・指導が重要である。
    その際に、不適切な食事・運動制限で患者のQOL を損なわないよう注意する。

表13-1 症状惹起に関与する運動以外の要因

特定の食物摂取後の運動負荷に加え、複数の要因が発症に影響する。問診時に、表中の要因についても確認する。


図13-1 原因食物と発症時の運動

原因食物は、小麦と甲殻類が多いが、果物や野菜の報告例が増加している。発症時の運動種目は、球技やランニングなど運動負荷の大きい種目が多い。その一方で、散歩や入浴中の発症例もある。


図13-3 原因食物診断のフローチャート

詳細な問診や血液・皮膚検査結果より被疑食物を絞り込む。初回の誘発試験は「食物+運動負荷」で行い、その結果が陰性であった場合にアスピリンの前投薬を考慮する。それでも陰性であった場合は原因食物を見直す。誘発試験が陽性であった場合は、運動前の原因食物の摂取制限により、再発症のないことを確認する。


表13-2 生活指導

運動2~4時間前の原因食物の摂取禁止を指導する。運動のみならず、原因食物+その他の誘因の組み合わせに関しても注意を促す。原因食物の完全除去や過剰な運動制限など不適切な指導により、患児のQOLを損なわないよう、注意する。頻回発症例や重症例には、アドレナリン自己注射薬を携帯させることが望ましい。