[ 要 旨 ]

  1. 1食物アレルゲンの本体は、大部分が食物に含まれるタンパク質である。
  2. 2食物中で特異的IgE 抗体が結合するそれぞれのタンパク質をアレルゲンコンポーネン ト、その結合部位をエピトープ(抗原決定基)という。
  3. 3交差抗原性を有していても臨床的に交差反応を起こすとは限らない。
  4. 4植物性食物アレルゲンの多くは4 つのタンパク質ファミリー(プロラミン、クーピ ン、Bet v 1 ホモログ、プロフィリン)に、動物性食物アレルゲンの多くは3 つのタンパク質ファミリー(トロポミオシン、パルブアルブミン、カゼイン)に属している。
  5. 5臨床症状と関連のあるアレルゲンコンポーネントが明らかになってきている。

図3-1 タンパク質の消化・熱処理による変化

特異的IgE抗体はタンパク質構造の特定の部位(エピトープ)を認識して結合する。一連のアミノ酸配列で構成されるものを連続性エピトープ、立体構造によって形成された不連続なアミノ酸配列で構成されるものを構造的エピトープという。


表3-2 種子類の生物学的分類

種子類は過剰に除去される傾向にあるため、生物学的分類を参考に臨床的交差反応の可能性を考慮した患者指導が必要最小限の食物除去に重要である。

表3-3 植物性食物アレルゲンタンパク質ファミリーの特徴

食物アレルゲンは限られたタンパク質ファミリーに所属していることが明らかになっており、植物由来の食物アレルゲンでは6割以上が4つのタンパク質ファミリー(プロラミン、クーピン、Bet v 1ホモログ、プロフィリン)に所属している。

表3-4 種子類の主なアレルゲン

ピーナッツおよび種子類のアレルゲンコンポーネントの中で特異的IgE抗体検査が保険収載されているものとして2Sアルブミンファミリーでの、Aar h 2 (ピーナッツ)、Ana o 3 (カシューナッツ)、Jug r 1 (クルミ)と、Bet v 1ホモログの Gly m 4 (大豆) がある。

表3-5 動物性食物アレルゲンタンパク質ファミリーの特徴

動物由来の食物アレルゲンの多くが、トロポミオシン、パルブアルブミン、カゼインの3つのタンパク質ファミリーに所属している。リポカリンは吸入アレルゲン(動物の唾液など)として重要であると同時に牛乳のβ-ラクトグロブリンが所属するタンパク質ファミリーでもある。


図3-8 cross-reactive carbohydrate determinant(CCD)の構造

貯蔵タンパク質を含む多くの種子類アレルゲンは糖タンパク質であり、構造上の共通性が高い糖鎖CCDを含有する。CCDを認識するIgE抗体はマスト細胞を脱顆粒させる力が弱いため、アレルギー症状を惹起することが少ない。