[ 要 旨 ]

  1. 1食物アレルギーは、特定の食物摂取によりアレルギー症状が誘発され、それが特異的IgE 抗体など免疫学的機序を介する可能性を確認することによって診断される。
  2. 2乳児のアトピー性皮膚炎では、まずスキンケア指導・ステロイド外用療法などで湿疹を改善させた上で、食物アレルギーの関与について検索を進める。
  3. 3食物アレルゲンの摂取と症状誘発の関連を、詳細な問診によって明らかにすることが診断につながる。
  4. 4免疫学的検査には特異的IgE 抗体検査、皮膚プリックテストなどがあるが、感作の証明だけで除去を安易に指導しないようにする。
  5. 5特異的IgE 抗体検査は、検査法により測定結果や評価法が異なることに留意する。アレルゲンコンポーネント特異的IgE 抗体を測定することにより、診断精度を上げることができる。
  6. 6特異的IgE 抗体価と症状誘発の確率の関係を示したさまざまなプロバビリティカーブが報告されている。

図8-1a 食物アレルギー診断のフローチャート(食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎)

乳児アトピー性皮膚炎では、詳細な問診の上、スキンケア指導や薬物療法を行っても症状が残存した場合に食物アレルギーの存在を考慮する。特異的IgE抗体陽性だけでは診断確定とはならず、食物除去試験で症状が改善し、食物経口負荷試験で症状誘発を確認することが必要である。湿疹の改善が乏しかったり、多抗原への感作を認める場合には専門医への紹介を考慮する。


図8-1b 食物アレルギー診断のフローチャート(即時型症状)

即時型アレルギー反応で発症した場合、問診や検査などから原因食物が特定できないときには経口負荷試験を行う。実施が困難なときには専門医への紹介を考慮する。


図8-3 プロバビリティーカーブの読み方

プロバビリティカーブとは、測定値に対する症状誘発の確率をロジスティック回帰法により算出してプロットしたものである。図8-3 のカーブでは、特異的IgE 抗体価2 kUA/L の場合、症状誘発の可能性は50%、20 kUA/L の場合は95%となる。
プロバビリティカーブを参考にするときの注意点としては、①算出した対象集団、②食物アレルギーの判断(OFC、症状誘発歴、陽性の判定基準など)、③ OFC の方法(加熱卵か非加熱卵か、総負荷量など)、④血清総IgE 値、⑤年齢などにより結果が異なることである。


表8-2 保険収載されている食物アレルゲンコンポーネント特異的 IgE 抗体検査

粗抗原に加え、アレルゲンコンポーネント特異的IgE 抗体の測定により、より精度の高い診断が可能となる。